家事をお金にすると143.6兆円?GDPに入らない仕事の「値付け」とは

こんにちは、Kaziプロジェクトの二戸です。周りの草木が少しずつ色づきはじめましたね。体調管理には気をつけつつ、紅葉も楽しめたらいいなと思っております。

今回は「家事を値付けしたら?」というテーマを考えてみたいと思います。早速ですが、「サテライト勘定」って知ってますか?なかなか聞き慣れない言葉かなと思います。

よく耳にするのは「GDP」のほうですよね。端的に言えば「国の経済の大きさ」を表す数字です。ただしGDPは、市場で売り買いされるものを中心に測っています。裏を返せば、お金のやりとりを伴わない活動は、基本的に数字に入らないということ。で、その代表が、家庭の中で行われる家事です。ではその内実を、詳しくみてみましょう!

サテライト勘定とは?

測れていない部分を補うために考え出されたのが「サテライト勘定」。GDPの計算そのものは変えずに、別の表を衛星(サテライト)のように横に置いて、本体に入らないものを測ってみる仕組みです。

日本では内閣府が、この仕組みで家事に値段をつけています。「無償労働の貨幣評価」と呼ばれるものです。対象は、炊事・掃除・洗濯のほか、育児・介護・買い物などです。

なぜ家事に値段をつけるのか?

そもそも、なぜ家事に値段をつけるのでしょうか? 夕飯を例に考えてみます。

僕が自分で夕飯をつくって食べたとします。食材を買ったお金はGDPに記録されますが、台所で料理をしたこと自体は、誰にもお金を払っていないので記録されません。

別の日、たまには外食もいいかなと思って外食したとします。今度は、料理がお店のサービスとして売り買いされるので、GDPに記録されます。

つまり、食卓に夕飯が並ぶという結果は同じなのに、誰がつくったかで、数字への現れ方が変わるわけです。

家事に値段をつける理由

家事に値段をつける理由があります。大きく2つです。

1つ目は、家庭の中の仕事を、GDPと同じ「金額」の物差しで測るため。時間で測るだけでは、何時間という話にはなっても、GDPとは比べられません。同じ金額にそろえて、はじめて同じ棚に並べられます。

2つ目は、GDPの増減を正しく読むため。たとえば、家庭でしていた料理を外食に置き換える人が増えれば、GDPは増えます。でもそれは、世の中全体で夕飯の量が増えたのではなく、家庭の中にあった仕事が市場に移っただけかもしれません。家庭の中の分も測っておけば、「本当に増えたのか、移っただけなのか」を見分ける材料になります。

実際いくらなの?

では、実際いくらなのか。

内閣府の推計によると、2021年の家事活動は「143.6兆円」でした。ただ、これは「家事に決まった値段がついた」という意味ではないです。総務省の「社会生活基本調査」にある時間のデータに、賃金をかけて金額にした推計。143.6兆円は「機会費用法」という方法で出した額です。

「機会費用」とは、何かをすることで、できなくなったことの価値のこと。ここでは、「家事をしていた時間に、もし外で働いていたら、いくら稼げたか」を指します。たとえば、1時間料理をする代わりに、1時間アルバイトをすれば得られたはずのお金を、その1時間の価値と見なすわけですね。

一方、市場で同じようなサービスを提供している専門職の賃金で評価すると118.9兆円、家事使用人の賃金で評価すると103.8兆円になります。同じ家事でも、評価のしかたで約104兆円から約144兆円まで開くわけです。

内訳を見てみます。一番大きいのは炊事の48.1兆円。次が買い物の28.7兆円、3位が掃除の18.4兆円、4位が育児の15.8兆円でした。炊事と買い物だけで76.8兆円、全体の半分強を占めます。

また、「炊事」は「炊事だけ」をしているわけではないかもしれません。子どもを見ながら料理をしたら、それは「料理の時間」なのか、「子どもを見ている時間」なのか。きれいに分けるのは難しく、数字はあくまで目安として受け取るのがよさそうです。

誰が担っている?

もう一つ、内訳を人ごとに見ると、別のことが見えてきます。機会費用法で見た2021年の一人当たり評価額は、男性が60.4万円(年間325時間)、女性が194.3万円(年間1,289時間)。女性は男性の3倍以上になっています。143.6兆円という総額だけでは見えなかった、「誰が担っているのか」が、ここで見えてきますね。

見える化することで気づけること

毎日の家事をしているとき、「この労働はいくらになる?」なんて考えていないと思います。僕も考えていません。でも、時間と賃金をもとに金額にしてみると、普段は見えていなかったものが見えてきます。

もちろん、なにもかも数値化することが良いことだとは思いません。数字にしてしまうことで、かえって息苦しくなることもあると思います。とはいえ、見えていないもの・ことを考えることは難しい。「なんとなく大変だ」と感じているだけでは、その大変さがどこから来ているのか分かりません。

誰がどれくらいやっているのか。それは、他の経済活動と比べてどのくらいの大きさなのか。金額という共通の物差しにそろえると、話し合うための土台ができます。143.6兆円という数字は、その出発点なのかもしれません。なにかの気づきに繋がったなら、幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

出典:内閣府経済社会総合研究所「ESRI統計より『無償労働の貨幣評価』について」『ESR』No.42
https://www.esri.cao.go.jp/jp/esri/esr/esr_report/esr_042/esr_042_n.pdf
内閣府経済社会総合研究所「無償労働の貨幣評価(2021年)」第71回ESRIフォーラム資料(2023年7月25日)。
https://www.esri.cao.go.jp/jp/esri/workshop/forum/230725/pdf/230725_siryo04.pdf
内閣府経済社会総合研究所「2022年度『無償労働等の貨幣評価』に関する検討作業 報告書」(令和5年7月)。
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/satellite/roudou/contents/pdf/2021musyou01.pdf

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